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専門家コラム

2022年11月07日

賃貸マンションの建設費、坪単価とは?

更地に賃貸マンションを建てて不動産投資を行う場合や、有効利用や相続税対策を行う場合でも、マンションの投資額がいくらになるかで、その成否が決まると言えます。そのため、賃貸マンションの建設費を把握することはとても重要です。そこで今回は、坪単価や建設費の考え方、構造別、地域別で大まかな相場感 の把握の方法についてご説明します。

  • ・坪単価とは
  • ・建設費とは
  • ・選定の基礎となる面積は何?
  • ・外構などの施工の量は同じ?
  • ・建築時期や事情について
  • ・構造別坪単価と建設費の相場
  • ・地域別坪単価と建設費の相場
  • ・まとめ

執筆者

田井 能久

不動産コンサルタント

不動産鑑定士として25年のキャリアを持つ。訴訟や調停、並びに相続等の税務申告のための鑑定評価書の作成が得意。 最近はマレーシアを中心としたビザの取得と海外移住のサポートを通して、トータルな資産コンサルティングも展開している。

坪単価とは

一般に建設費の目安になるものは、坪単価です。坪単価とは、建設費の総額を坪換算した床面積で割った数値を言います。 例えば、建設費の総額が2億円で床面積が1,000㎡ の場合、1,000㎡×0.3025=302.5坪なので、この場合は 20,000÷302.5≒66.12 つまり坪単価は66.12万円となります。 登記簿上や不動産広告では面積は㎡表記で統一されていますが、実務上の土地や建物の場合では今でも「坪」が多く用いられています。

この坪単価は建物の構造で異なっており、戸建住宅で用いられる木造が比較的安いのに比べて、アパートなどでよく用いられる鉄骨造やマンションに用いられる鉄筋コンクリート造になるに従って一般的には高くなります。

また坪単価には、原材料費以外に実際に職人さん が働いて作ることで必要となる人件費や仮設費なども含まれます。それゆえに人手不足の都会と田舎では人件費を中心としたコストの違いから、同じ構造でも単価が違います。

建設費とは

前述のように坪単価が分かれば、延床面積 を乗じることで建設費を把握できます。

建設費=坪単価×延床面積

延床面積とは、建物のそれぞれの階の床面積を合計した面積のことです。例えば1階が80坪、2階から5階が70坪 の建物ならその合計面積である360坪 が延床面積です。

単価の全く同じ構造の建物を2棟建てた場合にそれぞれ延床面積が200坪(1)と400坪 (2)なら計算上は以下のようになります。

  • (1) 66.12万円×200坪≒13,224万円
  • (2) 66.12万円×400坪≒26,448万円

 

これでも大まかな建築の把握という点では間違いではないのですが、建設費の総額を考える場合には以下もチェックすべきです。

算定の基礎となる価格は何?

建築基準法上の延床面積と施工延床面積は異なり、それぞれ「法床」「施工床」 と区別して表現されます。施工床とは、法床に算入しないバルコニーや吹き抜けなどを含めた、実際に工事を行う面積を含めたものを指します。 単価の把握は法床で把握されることが多いですが、算定の基準となる面積が違うと総額では何百万円の差となるため、単純な単価の比較では建設費の総額は分からないことに注意してください。

外構などの施工の量は同じ?

建物には含まれませんが、舗装や植栽 、土木工事や地盤工事の程度によっても、建設費の総額は変わります。建物価格が安くても地盤改良に思わず大きな出費が必要になることもあります。

建築時期や事情について

2019年のように消費税の増税がある場合には、契約日が1日変わるだけで、税率が変わり、結果として支払う建設費も大きく変わります。また2020年の東京オリンピックのような大規模なイベントや公共事業が行われるときは、人も物資も足らない状況になり、やはり建設費が高くなります。このように時期や事情によっても建設費は変わるのです。

構造別坪単価と建設費の相場

建物の構造別で建設費を比較するひとつの有益な資料としては国土交通省による「建築着工統計調査」(※1)があります。これは、建築基準法第15条第1項の規定により届出が義務づけられている建築物を対象とする統計調査で、毎月の調査結果が公表されています。 この調査では、建築物の着工状況について建築主別の建築物の数、床面積の合計、工事費予定額などの結果を、全国、都道府県、市区町村の地域で提供しており、構造別や地域別の比較をすることに有効です。 2019年9月分の調査では「建築物:総括表」において構造別の床面積と工事費予定額が分かるので、その単価を計算すると以下のようになります。

  • 木 造:坪56.5万円(1㎡あたり17.1万円)
  • 鉄骨造:坪72.1万円(1㎡あたり21.8万円)
  • 鉄筋コンクリート造:坪92.6万円(1㎡あたり28.0万円)

あくまでも統計資料であるので、実際に清算される金額は違う可能性が高いですが、統一的で時系列的な基準のデータである点で参考になると思います。

更新情報(2022年11月)

具体的に2021年度までの建築費の推移を見てみましょう。 国土交通省による「住宅着工統計」(※2)を元に、2017年から2021年までの工事予定額の推移をグラフにしてみました。 調査対象物件は、「居住専用住宅かつ貸家共同住宅の新築物件」です。所謂アパート、賃貸マンションが該当します。

構造別の工事予定額推移をみると、木造は2%弱程度の価格上昇率であるのに対し、鉄骨造と鉄筋コンクリート造は、11~17%の上昇率であることが分かります。

地域別坪単価と建設費の相場

「建築着工統計調査」では「都道府県別・地域別・都市圏別:総括表」において、各都道府県別の床面積と建築物の工事費予定額から県別の単価が計算できます。それによると主だった県の単価は以下になります。

  • 全国平均:坪68.7万円(1㎡あたり20.8万円)
  • 北海道:坪60.2万円(1㎡あたり18.2万円)
  • 東 京:坪97.5万円(1㎡あたり29.5万円)
  • 大 阪:坪76.0万円(1㎡あたり23.0万円)
  • 佐 賀:坪54.5万円(1㎡あたり16.5万円)
  • 沖 縄:坪77.0万円(1㎡あたり23.3万円)

  東京は建築される建物が高層のビルなども多いので、本来なら構造別に分けて比較すべきですが、統計数値を二次加工するのが困難なため、不正確な指標となります。それでも、やはり東京は群を抜いて単価が高いことや地方の北海道や佐賀などが安いことが、感覚的でなく数値としてはっきり確認できます。さらに沖縄は近年の不動産の活況が反映し、大阪を超えて全国2番目に単価が高いことも非常に興味深いです。   このように統計資料を加工し分析することで、自身の感覚が合っているか否かのチェックをすることができるでしょう。

更新情報(2022年11月)

地域別の特徴を3大都市圏の中心地(東京、愛知、大阪)で比較してみると、どの構造も東京の工事予定額が突出して高いことがわかります。

今後は、コロナショックや、ウクライナ危機による建築資材の高騰や、建設作業員の高齢化や働き方改革による労務費のアップが、建設費に反映されてくることが予想できます。 

まとめ

今回は坪単価と建設費の関係と、その建設費が構造や地域によって違うことを統計資料によって説明しました。坪単価が高いのか、安いのか、適正さを判断するには、統計資料も活用しつつ、積極的に自ら情報を集めることでより精度を高め、やはり最後には信頼できる建築会社を選び相談することが大切です。  

(※1)出典:e-Stat 政府統計の総合窓口|建築着工統計調査

(※2)出典:e-Stat 政府統計の総合窓口|住宅着工統計調査

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