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専門家コラム

2015年10月29日

養子縁組で相続対策。その注意点と相続対策効果とは?

相続対策をする上で「養子縁組」を活用する際に知っておくべきこと、そして気になる軽減効果について専門家にお尋ねしました。

監修者

松原 健司氏

税理士法人FP総合研究所 代表社員・税理士

平成8年、関西学院大学経済学部卒業。平成12年、税理士登録。その後、税理士法人FP総合研究所において資産税部ゼネラルマネージャー、平成26年4月からは東京支店長も兼務。平成28年3月、代表社員(CEO)となる。著書に「これならできる!事業継承Q&A」(実務出版)、「相続税対策に成功する賃貸住宅活用の秘訣」(清文社)等がある。資産税に強い税理士として、わかりやすいセミナーが参加者から好評で、土地オーナー向けセミナーも多数講演。

養子縁組で相続対策を考えています。人数の制限はありますか?

人数制限はありませんが、相続税法上で有効な養子の数には制限があります。

即効性のある相続対策として有効な養子縁組

養子縁組は届け出た日から効力が発生するため、相続税対策の中では即効性のある対策といえます。そのためかつては相続発生の直前に親族を養子縁組するケースが目立ちました。こうした相続税の租税回避行為を防ぐため、1988年の税制改正で、相続税法上の法定相続人に認められる養子の数が制限され、被相続人に実子がいる場合は1人まで、実子がいない場合は2人までとなっています。 しかし、次に該当する養子は実子とみなされます。 1.特別養子縁組で被相続人の養子となった者 2.被相続人の配偶者の実子で被相続人の養子になった者 3.実子や直系卑属が相続開始前に死亡もしくは相続権を喪失したため代襲相続人となった子や孫など なお、この養子の人数制限はあくまで相続税法上のことであり、民法上の人数制限はないので、養子縁組みで相続人の数そのものを増やすことは可能です。

孫養子には相続税額の2割加算も

孫を相続人として養子にするのはよくあるケースですが、この場合は注意が必要です。 被相続人の一親等の血族(子)および配偶者以外の相続人には、係る相続税額が2割加算されます。これは子を飛ばして孫へ財産を相続させることで相続税の課税を1度にする「相続税の一代飛ばし」に対する措置です。 但し、子(孫の親)が亡くなり、孫が子に代わって相続人になっている場合(代襲相続)には2割加算の対象から外れます。

養子縁組をした場合の相続対策効果とはどんなものですか?

法定相続人が増えることで、相続税額の算出における基礎控除額を増やせるほか、累進税率が緩和されます。

基礎控除額の増加と累進税率の緩和

養子縁組で法定相続人を増やすことによるメリットはいくつかあります。 まず、相続税の総額を計算する際に、課税額の合計から差し引くことのできる「基礎控除額」は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で算出するため、法定相続人が増えれば基礎控除額も増加します。 相続税の総額は財産を法定相続分に分けたものとみなした場合における各取得金額にそれぞれ累進税率を適用して計算します。したがって法定相続人が増えることで、適用される累進税率が低くなる可能性があります。

非課税限度額の増加

相続人が受け取る生命保険金や退職手当金などは、それぞれ「500万円×法定相続人の数」まで非課税とされています。したがって養子縁組で法定相続人が増えればこの非課税限度額も増加します。

相続税の一代飛ばしで課税が一度で済む

さらにもう一つ、親から子へ、子から孫へと財産が相続される場合には、その都度相続税が課税されるものですが、養子縁組によって親から直接孫へ相続させれば相続税の課税は1度で済みます(相続税の一代飛ばし)。但し、相続税額の2割加算の対象者になります。

安易な養子縁組が相続争いの原因となることも!

養子縁組は、相続対策の中でその対策効果の即効性と手続の簡便性から見れば最も優れた対策といえます。 但し、養子も実子と同じ相続分を有し、かつ遺留分も認められます。そのため安易な養子縁組が相続争いの原因となることもありますので注意が必要です。

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