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専門家コラム

2015年10月29日

贈与税の非課税枠拡大!住宅購入時に資金援助を利用した節税対策

2015年度税制改正における税に関する改正点について専門家に伺いました。内容を吟味して制度を活用し、相続対策にお役立てください。

監修者

松原 健司氏

税理士法人FP総合研究所 代表社員・税理士

平成8年、関西学院大学経済学部卒業。平成12年、税理士登録。その後、税理士法人FP総合研究所において資産税部ゼネラルマネージャー、平成26年4月からは東京支店長も兼務。平成28年3月、代表社員(CEO)となる。著書に「これならできる!事業継承Q&A」(実務出版)、「相続税対策に成功する賃貸住宅活用の秘訣」(清文社)等がある。資産税に強い税理士として、わかりやすいセミナーが参加者から好評で、土地オーナー向けセミナーも多数講演。

子供の住宅購入を資金援助する際に節税対策として注意するべきことはありますか?

一括贈与による非課税枠は拡大されましたが、時期によってその限度額が異なりまするので注意が必要です。 子や孫への住宅取得資金の贈与で、一定の要件を満たす場合に非課税となる制度があります。 今回の税制改正では、住宅市場の活況化や消費増税前の駆け込み需要及びその反動も考慮し、その影響を平準化するという目的も含め、非課税枠を拡大したうえで平成31年(2019年)6月まで適用期限が延長されました。さらに、過去にこの制度を利用している場合でも消費税が10%に増税された後に住宅の取得等をする者については、消費税10%適用枠を再度適用できるように改正されました。(図1)

「小規模宅地の特例」を適用した節税対策

親の住む土地については一定の要件を満たすと相続税の課税価格を330㎡まで80%を減額できる「小規模宅地の特例」の適用により相続対策が可能となります。 同居者がいない場合、子供が家を所有していなければ子供はその土地を相続する際に一定の要件を満たせばこの特例を適用できますが、親が住宅資金を贈与して子供が家を持つことでこの特例を使えなくなる可能性があります。地価が高い所に自宅を所有している場合、住宅取得資金贈与の非課税効果よりも小規模宅地の特例を利用できないデメリットの方が大きくなることも。贈与せず親自身が建物を建てれば財産は現金から建物に変わって評価が下がり、親の住む土地は小規模宅地の特例も受けることができます。

住宅取得資金のほかに、どんな形で贈与すると相続節税対策できますか?

教育資金、結婚・子育て資金なども非課税にできる制度があります。(図2)

教育資金は一括贈与で将来の分まで非課税

親などから30歳未満の子や孫などに教育費を一括して贈与した場合、1,500万円まで非課税になる制度があります。この度その適用期限が平成31年(2019年)3月末まで延長され、通学定期代や留学渡航費用も対象に加わりました。 教育資金は必要な時にその都度贈与しても非課税ですが、一括贈与の制度では将来のものまで含めて贈与しても非課税となります。 しかし、手続きの際には信託銀行等の金融機関を経由して税務署に届出書を提出し、金融機関に領収書を持参して出金を行うなどの手間がかかります。

結婚・子育て資金の一括贈与も非課税に

さらに平成27年(2015年)4月より父母や祖父母などから20歳以上50歳未満の子や孫に対して、結婚・子育て資金を贈与した場合、1,000万円(結婚関係費用は300万円)まで非課税となる制度が創設されました。(平成31年(2019年)3月末まで) この制度では、贈与を受けた子や孫が50歳の段階で使い残しがあればその残額に対して贈与税が課税されます。 また、贈与をした人が亡くなった場合には残額が相続財産に加算されますので注意が必要です。一見すると贈与時に財産が減少したように見えますが、結局のところ税効果は使った部分のみで、その都度贈与しているのと変わらないことになります。 以上の制度は、子や孫1人あたり110万円までの暦年贈与とは別に実行できます。

制度の見極めが相続対策の肝

相続対策に活用するには制度の効果を見極め、資産全体を総合的に判断し検討しましょう。

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