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賃貸経営ニュース

2017年11月17日

約120年ぶりの民法改正 賃貸経営への影響は?

約120年ぶりに改正民法が成立し、2020年6月2日までの施行が予定されています。賃貸経営に影響する主なポイントをご紹介します。

① 敷金返還義務、原状回復ルールについて

賃貸借の終了時における敷金の返還等について、これまで民法には規定がなく、地域による違いがあったり、慣例的に取り扱われてきました。しかし、敷金を巡る紛争は少なくなく、判例の積み重ねによって紛争解決を図っていました。そこで今回の民法改正においてルールが明文化されることになります。 具体的には、 ・「敷金」とは、「名目に関わらず賃料債務等を担保する目的で賃借人が賃貸人に交付する金銭」として定義される。 ・賃貸借契約が終了して賃貸物の返還を受けたときに敷金を返還しなければならない。 ・敷金は、賃料等の未払い債務を控除した残額を返還する。

  一方、原状回復に関してもこれまで民法には規定がなく、汚れの程度等を巡ってトラブルになっていました。既に東京都では修繕負担について明示された東京ルール(賃貸住宅紛争防止条例)が2004年から施行されています。今回の民法改正でも、通常の使い方でできた傷や汚れ、経年劣化による損傷については、賃借人に原状回復義務がないということが明文化され、賃料の未払い分、故意・過失による損傷の修繕費用等がない限り、原則として敷金の全額が返還されることになります。

しかし、これらの規定は任意規定のため、特約を設けて入居者にクリーニング費用等を負担してもらうことは可能です。改正内容は、国土交通省や東京都が既に作成しているガイドラインに沿ったもので、これまでの判例を踏まえた内容が明文化されるにすぎません。したがって既にこれらに準じた実務をされているオーナー様の場合、改正後も敷金返還・原状回復に関しては大きな影響はないでしょう。 ただし、明文化により今まで以上に入居者の目は厳しくなることが予測されるため、特約締結時に十分な説明を行う必要があります。

② 設備等、利用不能時の家賃減額の方法について

改正により賃借物の一部が使用収益できない割合に応じて、賃料が当然に減額されることになります。これまでは、賃借物が被災し使用できなくなったとしても、賃借人が減額請求しない限り法律上は賃料の支払い義務が残ることになっている。今後は、減額請求がなくても当然に賃料が減額されることになり、たとえば「給湯器が故障し風呂に入れない」「エアコンが使えない」といった場合、故障の原因が賃借人の責任でなければ、当然に家賃が減額されます。現時点では減額の対象となる範囲や、減額の算出方法などが具体的に定められていないので要注意です。今後は、契約書にトラブル回避のための条項を設けておくべきでしょう。ただし、故障等の原因が賃借人にあれば、減額の必要はありません。

③ 連帯保証(個人)の保証範囲について

賃貸契約では連帯保証人を設け、保証人は入居者と同じ責務を負うものと定めるため、賃借人に支払い能力がない場合、滞納賃料や損傷の修繕費を連帯保証人に請求することが可能でした。今回の改正では個人の保証人を保護するため、保証極度額の定めを必要とし、極度額を定めない保証契約は無効となってしまいます。改正法施行後に契約更新した場合や、新規の契約では「賃料○ヶ月分を限度として」など、具体的な保証上限を定める必要があります。また、連帯保証人から貸主に対して、賃料支払い状況の問い合わせあった場合の回答義務など、保証人に対する情報提供義務も新設されます。

※民法改正による賃貸経営の影響は本記事で取り上げたポイント意外にもあります。改正法は2020年6月2日までに適用されるので、今のうちに契約内容を見直しておき、不安な点は管理会社や専門家に相談することをお勧めします。

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