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2020年01月17日

マンション投資の節税のしくみ

マンション投資で節税できると言われたことはありませんか? しかし必ずしも節税になる訳ではありません。 今回はマンション投資の節税のしくみを解説します。   ・節税しやすい税金 ・相続税の節税 ・不動産投資の目的を節税にすべきではない ・まとめ

執筆者

松本 佳之

税理士・公認会計士・行政書士・宅地建物取引士

1980年兵庫県に生まれる。2001年公認会計士二次試験合格。2002年関西学院大学商学部卒業、朝日監査法人(現あずさ監査法人)入所。2005年公認会計士三次試験合格、公認会計士登録。2007年税理士登録後独立し、みんなの会計事務所を開設。監査法人勤務時代は企業公開部門に所属し、さまざまな実績を重ねる。

節税しやすい税金

マンション投資で節税できる税金の種類として、まず、所得税と住民税が挙げられます。 所得税や住民税は、個人が、1月1日から12月31日までに得た所得から各種控除を差し引いた金額をもとに計算されます。この所得には、会社員や会社役員の給与所得や個人事業主の事業所得、不動産賃貸による不動産所得など、個人の方が得るさまざまな所得が含まれます。

マンション投資が節税対策になる理由

マンション投資で節税ができるのは、マンション投資をすることによって、所得を減らすことができる場合があるからです。例えば、会社員や会社役員の方の給与所得と不動産所得は損益通算をすることができます。マンション投資による不動産所得がマイナスになれば、合計の所得が減り、その分、所得税や住民税が減ることになるのです。

損益通算とは?

先ほど「損益通算」という言葉が出てきました。 所得税では、所得の種類によって税金の計算の仕方が区分されています。会社員や会社役員の給与は「給与所得」、個人事業主の事業による所得は「事業所得」、不動産賃貸による所得は「不動産所得」などに区分されています。   損益通算とは、違う区分の所得を合算して所得を計算することを言います。 この不動産所得は、給与所得や事業所得と損益通算することができます。そのため、不動産所得がマイナスになると、給与所得や事業所得と損益通算することで、合計の所得を減らすことができます。不動産所得がマイナスになるのは、収入より経費の方が多い状態です。

不動産所得がマイナスになる要因のひとつ、減価償却

不動産所得がマイナスの場合に、所得税や住民税を減らすことができます。この不動産所得がマイナスになる要因のひとつに減価償却があります。 減価償却とは、不動産(主として建物)の取得価格を、資産の種類ごとに定められた期間(法定耐用年数)にわたって費用化していくことを言います。建物は、経年や使用することにより通常価値が下落するので、その価値の下落相当分を経費に計上することができます。一方、土地は経年や使用による価値の下落がないので、減価償却をすることはできません。   例えば、3,000万円の中古建物を購入し、定められた期間(法定耐用年数)が20年だったとします。この場合は、一年間で150万円(3,000万円÷20年)が減価償却費として費用になります。年間の家賃収入が120万円であれば、減価償却費150万円を差し引くと、30万円のマイナスとなります。 不動産を維持するためには、減価償却費以外にも管理費や固定資産税、修繕費などさまざまな費用が生じることでしょう。

相続税の節税

相続税は、相続によって、被相続人(お亡くなりになった人)の相続財産を取得した人にかかる税金です。相続があるとすべて相続税がかかるというわけではなく、基礎控除の金額以上の相続財産があるときに相続税がかかります。基礎控除の金額は次のように計算します。   基礎控除の金額=3,000万円+600万円×法定相続人の数   例えば、法定相続人が妻と子2人の計3人の場合は、3,000万円+600万円×3人=4,800万円が基礎控除の金額となり、4,800万円を超える相続財産があるときに、原則として相続税がかかることになります。ただし、相続税には、配偶者控除などさまざまな控除や特例もあるため、基礎控除の金額を超えていても相続税がかからないことがあります。

相続税を節税できると言われる理由

相続税を計算する際には、相続財産がどれだけの金額になるかを評価しなければなりません。この評価を行う際のルールも決められていますが、不動産の場合、通常は実際の売買価格よりも低い価格で評価されます。例えば、相続税の計算にあたって、土地は通常、国税庁が公表する路線価を基にして評価します。この路線価による評価は、公示価格による評価の8割程度であると言われています。つまり、3,000万円の現金が相続財産となる場合よりも3,000万円で購入した不動産が相続財産となる場合のほうが、一般的に相続税が少なくなるのです。

不動産投資の目的を節税にすべきではない

ここまでマンション投資の節税の仕組みについて解説してきましたが、マンション投資をすれば必ず節税できる 訳ではありません。マンション投資で、所得税や住民税を減らすためには、不動産所得がマイナスでなければなりません。しかし、初めは不動産所得がマイナスであってもいずれはプラスになり、そのときは逆に所得税や住民税を増えることになります。いつまでもマイナスであれば、マンション投資自体が失敗していることを意味しています。   マンション投資をすることで、一時的に節税になることもありますが、それは不動産投資の本来の目的ではありません。あくまで不動産投資の目的は、不動産という資産を活用して、収入を得ることです。それに不動産投資には、空室リスクや不動産の価値下落などさまざまなリスクもあるので、それらのリスクも考慮しておく必要があります。

まとめ

マンション投資の節税の仕組みについて解説しました。不動産 投資をすると税金は必ず関わってきます。税金の仕組みをしっかりと理解し、うまく節税ができそうなときは節税をするとよいでしょう。

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