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専門家コラム

2018年10月20日

生産緑地は今後どうなる?どうする?制度改正と「2022年問題」について

多くの生産緑地が指定期日の30年目を迎える2022年、土地オーナー様と賃貸市場にどのような影響が起こりえるか、専門家にお聞きしました。

監修者

藤宮 浩氏

株式会社 フジ総合鑑定 代表取締役・不動産鑑定士

日本大学法学部卒業。平成16年不動産鑑定士登録後、株式会社フジ鑑定の代表取締役に就任。不動産評価部門の「フジ総合鑑定」、税務部門の「フジ相続税理士法人」等から成るフジ総合グループの代表を務め、年間700件超の相続関連案件に携わる。土地評価見直しによる相続税還付業務の第一人者として講演多数。著書に「あなたの相続税は戻ってきます」「日本一前向きな相続対策の本」(ともに現代書林)、「これだけ差が出る相続税土地評価15事例」(クロスメディア・マーケティング)。

生産緑地の「2022年問題」とは?

生産緑地地区の指定を受けた農地は、固定資産税の軽減や相続税の納税猶予などの優遇措置がある反面、営農の継続が前提となりますので、建物の建築などに制限が課せられます。 指定を解除するには、下記のいずれかに該当する必要があります。 ①指定後30年が経過したとき ②主たる従事者が死亡したとき ③怪我や病気等、農業が不可能となるような事由があったとき

  全国に存在する生産緑地は約6万2000地区(約1万3000ha)。このうちの約8割が、2022年に市区町村への買取り申出が可能となる30年の期限を迎えます(改正生産緑地法が適用された1992年に、市街化区域内の農地が一斉に生産緑地の指定を受けたため。)。しかし、財政事情から自治体が買取りに応じるケースは少ないとみられ、宅地として売却・活用される土地が増加した場合、供給過剰を引き起こし地価の下落や空家問題の進行が加速するのでは――。これが「2022年問題」として懸念されている問題です。 1都3県では約7645ha(約2312万坪)の生産緑地がありますが、仮にこのうちの1割でも戸建やマンション用地に転用されるとなれば、住宅市場全体が大きな影響を受けるのは明らかです。また、生産緑地は面積が500㎡以上あることが指定要件です(今回改正)。この規模の土地の売却・活用が一斉に進行するならば、生産緑地所有者に限らず、周辺エリアに賃貸物件を所有している方も軽視できない問題です。

生産緑地の今後の動きに備えて、土地オーナーがしておくべきことは?

高齢化や後継者不足といった農家を取り巻く状況を思うと、2022年を目途に解除を考えている世帯も相当数あると思われます。解除後は宅地並みの固定資産税が課せられるため、維持困難となった土地の一定数が売却に回ることは避けられません。   ただし、すべての生産緑地が一気に動き出すわけではありません。相続税の納税猶予の適用を受けている場合は、解除すると猶予が打ち切られ「本来の相続税+猶予期間に応じた利子税」という遡り課税が発生します。東京都では生産緑地所有者の約半数が納税猶予を受けており、高額な遡り課税の負担から、これらの方は解除を踏みとどまるものと考えられます。   加えて、「特定生産緑地」の導入を含む生産緑地制度の改正も、解除の抑止力になっていると思われます(下図)。したがって流動的な生産緑地は2~3割程度と見込まれます。

生産緑地の宅地化が進み賃貸の競合物件が周辺に増えれば、空室率や賃料に影響します。築古など優位性が低いと思われる物件をお持ちの方、借入が残っている方などは特に注意が必要です。いずれ土地の売却をお考えの方は、早めの決断が望ましいかもしれません。 生産緑地をお持ちの方は、今のうちに営農継続の展望や解除した場合の納税資金対策、土地活用の可能性など多角的に検討しておきましょう。

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