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専門家コラム

2016年03月01日

マイナンバー制度で賃貸経営はどう変わる?

2016年1月からスタートしたマイナンバー制度。テレビ等で大々的に告知され、なんとなく分かってきたものの賃貸経営とどのように関わりがあるか分からない賃貸マンションンオーナー様もいらっしゃると思います。今回はそんな疑問を解決すべく税理士松原健司氏に監修いただき、利用範囲や注意点、賃貸経営との関連情報をお知らせします。

監修者

松原 健司氏

税理士法人FP総合研究所 代表社員・税理士

平成8年、関西学院大学経済学部卒業。平成12年、税理士登録。その後、税理士法人FP総合研究所において資産税部ゼネラルマネージャー、平成26年4月からは東京支店長も兼務。平成28年3月、代表社員(CEO)となる。著書に「これならできる!事業継承Q&A」(実務出版)、「相続税対策に成功する賃貸住宅活用の秘訣」(清文社)等がある。資産税に強い税理士として、わかりやすいセミナーが参加者から好評で、土地オーナー向けセミナーも多数講演。

マイナンバー制度の目的は?個人番号は何に利用される?

目的は公平公正な社会のため行政を効率化し、暮らしを便利にすること。

マイナンバー制度創設の目的として国は「公平・公正な社会の実現」「行政の効率化」「国民の利便性の向上」を掲げています。これまで、所得があるのに税金や社会保険の扶養に入っていたり、生活保護を不正に受給している人がいても、役所の縦割りの関係や、住所・氏名等による個人確認に大変手間取ることから、実態把握が困難でした。マイナンバー制度ではこれらの情報が一つの番号で管理されるようになるため、情報収集がスムーズかつ確実に行われることが予想されます。

利用範囲は、社会保障・税・災害対策。今後拡大の見込みです。

2016年1月開始の制度でマイナンバーを利用できるのは、「社会保障」「税」「災害対策」の3分野のみで、主な内容は図1の通りですが、将来的に利用範囲は拡がります。例えば預貯金口座へのマイナンバーの付番は既に法案が通っており、2018年から開始予定です。これにより個人の預貯金情報が課税庁に把握されてしまうと思われがちですが、この制度の開始以前から課税庁は、相続税等の調査にあたり住所・氏名等で財産調査を行っています。今後は住所・氏名に代わりマイナンバーで照会する仕組みが作られるだけで、現在の税務調査がこの制度で大きく変わるわけではありません。尚、銀行等からマイナンバーの告知を求められても法律上、告知義務が課されてないため拒否することも可能です。但し国は付番開始後3年を目途に、必要な時は預貯金口座への付番促進のための所要の措置を講じると言っています。対応を急ぐ必要はありませんが、いずれ義務化される可能性は含んでおいた方がよいでしょう。

確定申告や賃貸経営でマイナンバーはいつから必要になる?

確定申告で必要になるのは2016年分の所得の申告から

マイナンバーを記載して行う確定申告は、2016年分の所得の申告からで、2017年3月15日が期限の確定申告となります。2016年3月15日までに提出する確定申告は2015年分の所得ですから、マイナンバー記載の必要はありません。また、贈与についても2016年分の贈与税申告からマイナンバーの記載が必要になります。

賃貸マンションオーナーへの影響は?

賃貸マンションオーナーの皆様に関係するものでは、「不動産の使用料等の支払調書」があります。賃貸している物件の借主が法人で、年間の支払家賃が15万円を超える場合、借主は物件所有者(賃貸オーナー様)への年間の家賃支払額を課税庁に提出するルールになっています。この調書は借主が記載して課税庁に提出しますが、提出には貸主である賃貸オーナー様の住所・氏名およびマイナンバーを記載する必要があるため、借主である法人から皆様のもとにマイナンバーの問い合わせが来ます。マイナンバーの取得には番号確認と身元確認が必要なため、借主である法人と直接面談したり、身元確認書類の郵送等の手続きが発生することが予想されます。 マイナンバー制度を騙った詐欺事件が早くも発生しています。ご自身の番号管理は慎重に行なわれるようご注意ください。

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