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コラム

2025年06月06日

建替えやリフォーム前に確認したい 省エネ住宅に関する補助金と制度について

近年、地球温暖化対策やエネルギー価格の高騰などを背景に、国や地方自治体では、様々な補助金や制度を設けています。

制度を上手に活用して、快適でエコな賃貸住宅を実現しましょう。

賃貸物件の省エネ化はオーナー様にもメリットが

世界中でカーボンニュートラルの実現に向けた様々な取り組みが推進され、住宅に対する入居者の省エネ意識も高まっています。

省エネ性能の高い住宅は、光熱費の削減につながるため、入居者にとって魅力的な物件となります。特に最近の物価高やエネルギー価格の上昇による家計への影響が大きい子育て世帯や若者夫婦世帯は、省エネ性能を重視する傾向があります。

 

とはいえ、省エネ住宅へのリフォームや建替えには通常より割高な費用がかかります。そこで今回は、省エネ住宅で受けられる補助金の種類と条件について詳しく解説します。

 

省エネ住宅で利用できる補助事業について

建築物分野における省エネ対策を加速させるため、4月から施行の改正建築物省エネ法・建築基準法等、順次、法改正が進められています。それを受けて、国や自治体がさまざまな助成制度を設けています。

 

まず国土交通省、経済産業省、環境省の3省が連携して行う補助事業「住宅省エネ2025キャンペーン」について解説します。【表1】

 

同キャンペーンは 「子育てグリーン住宅支援事業」 「先進的窓リノベ2025事業」 「給湯省エネ2025事業」 「賃貸集合給湯省エネ2025事業」の4つの事業で構成されています。

これらの補助金は、補助対象が重複しなければ、併用することも可能です。交付申請は、事前に登録を済ませた住宅省エネ支援事業者(工事を行う業者など)がそれぞれの事業の事務局に行いますが、申請手続きを一本化できるワンストップでの申請も可能です。補助金は、工事施工者から工事を依頼されたオーナー様に還元されるという流れになります。

 

ZEH水準を上回る超省エネ住宅の支援事業も

ここで注意したいのが、「子育てグリーン住宅支援事業」で最大額の補助金を受けるには「GX志向型住宅」が要件である点です。

これは脱酸素社会と経済発展の両立を実現するための取り組み「GX(グリーントランスフォーメーション)」の考え方に基づく次世代型省エネ住宅のことを指します。他の補助対象住宅と比べ、さらに高い省エネ性能基準を満たす必要があり、最も特徴的な違いでは、GX志向型住宅にのみ「高度エネルギーマネジメント」システムの導入要件が義務付けられていることです。

このシステムにより太陽光発電設備等の発電量を把握し、建物内の冷暖房設備や給湯設備等を制御することが求められます。【表2

 

各自治体独自の支援や金利引下げ制度も要チェック

建築物分野の省エネ対策を進めるため、国だけでなく各都道府県・市町村などの自治体でも独自の支援制度を積極的に実施しているところがあります。

たとえば東京都では、2019年から毎年実施されている助成制度「東京ゼロエミ住宅」により、省エネ住宅の建築主に対し、その費用の一部を助成する事業を実施しています。

 

また、同じく東京都では、電気自動車(EV)の普及を促進するため、2025年4月から新築建物を対象にEV充電器の一定規模の設置が都条例により義務付けされます。この充電器の「購入費」と「設置にかかる工事費」に対する補助金制度があり、条件によっては殆ど費用負担なく充電設備を設置できる場合があります。

 

最後にもう一つ、省エネ住宅の建設を支援する制度をご紹介します。住宅金融支援機構では、一定の省エネ基準を満たす賃貸住宅を建設するオーナー様を支援するための「賃貸住宅融資」金利引下げ制度を実施しています。「長期優良住宅」または「ZEH」の基準を満たす賃貸住宅を建設するオーナー様に対し、借入金利を当初15年間、年0.2%引引き下げる制度で、同時に「子育て配慮賃貸住宅を対象とした金利引下げ制度」も併用すると最大0.4%の金利引下げが可能となります。【表3

 

補助金や優遇制度を利用する際の注意点

省エネ性能の高い住宅は、初期費用は高くなりがちですが、長期的な視点で考えることが重要です。初期費用だけでなく、将来的な光熱費削減や資産価値向上なども考慮して、計画的に対策を進めましょう。

国や都道府県、市町村などによる補助金制度は、予算がなくなり次第終了となる場合があります。制度によって申請方法や必要書類も異なります。早めに情報収集を行い、申請準備を始めることが肝心です。複数の補助金制度を併用できる場合も多々あるので、最新の情報をチェックしながら、信頼できる専門家や住宅省エネ支援事業者などに相談し、最適な組み合わせを見つけましょう。

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