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専門家コラム

2020年12月17日

マンション経営で知っておきたい最適な家賃設定方法

マンション経営では、さまざまな点でオーナーの判断が重要になります。例えば、建物の修繕や改修の時期や範囲、予算などはもちろん、入居者募集のポイントとなる募集条件の決定もオーナーが最終判断をします。中でも家賃設定は入居者募集においては最重要ポイントのひとつ。実際の運営では、入居者募集を委託する管理会社の営業担当者と相談しながら家賃設定を行いますが、ここでは最適な家賃設定のために知っておくべき知識についてみていきましょう。

執筆者

秋津 智幸

不動産サポートオフィス 代表コンサルタント

公認不動産コンサルティングマスター・宅地建物取引士・ファイナンシャルプランナー(AFP)
自宅購入、不動産投資、賃貸住宅等不動産全般に関する相談・コンサルティングを行う他、企業研修や各種セミナー講師、書籍、コラム等の執筆・監修にも取り組む。
著書:「賃貸生活A to Z」(アスペクト)、「〔2019~2020年版〕30年後に絶対後悔しない中古マンションの選び方」(監修)(河出書房新社)他

正しく家賃を設定する5つの基準項目

家賃設定を行うにあたっては、周辺の家賃相場を考慮して設定する必要があります。周辺の家賃相場と比較するうえで重要な基準となる項目として、「立地」「間取りと面積」「建物構造」「築年数」「設備」の5つがあります。

立地

家賃設定を行うにあたっては、周辺の家賃相場を考慮して設定する必要があります。周辺の家賃相場と比較するうえで重要な基準となる項目として、「立地」「間取りと面積」「建物構造」「築年数」「設備」の5つがあります。

間取りと面積

不動産の家賃設定や売買価格の設定では、面積と単価(家賃や価格を面積で割った金額)には相関関係があります。基本的に面積が大きいほど単価が下がり、小さいほど単価は高くなる傾向があります。周辺の物件と比較する際には、この単価の傾向を念頭に置きましょう。 また間取りとその需給バランスも家賃に反映されます。例えばファミリー層の多い地域で40㎡の2DKなら希望者も多く、周辺相場並みの家賃設定が可能です。しかし同じ40㎡でも1LDKでは入居希望者が減ってしまう可能性が高く、家賃設定は低めにしなければなりません。周辺物件の間取りなどを参考に、需要も考慮して家賃設定を行うことも大切になります。

建物構造

建物の構造については、住宅の耐震性や断熱性、遮音性などが住環境として重要視されます。そのため、鉄骨鉄筋コンクリート(SRC)造や鉄筋コンクリート(RC)造、次いで鉄骨(S)造、木造の順に好まれる傾向があり、家賃設定においてもこれに準じて高い傾向です。また建築コストの面から見てもSRC造、RC造、S造、木造の順にコストが高く、オーナーとしてはその分家賃は高くなってしまうという側面もあります。 家賃設定では、周辺相場の同じ構造の物件を参考にし、ほかの構造の物件と比べて設定バランスがおかしくないかも確認するといいでしょう。

築年数

築年数も家賃設定において考慮すべき要素です。新築物件では「新築プレミアム」と呼ばれるようにやや高い家賃設定が可能ですが、築年数を経るに従って家賃は下がっていきます。建物構造がRC造の物件でも、築年が古い場合は、新築の木造の物件よりも低い家賃設定にしなければならないこともあります。 従って築年数を経た物件では、立地や建物構造、面積などにくわえ、築年数も前後数年以内で類似しているほかの物件と同水準に設定する必要があります。  

設備

設備が家賃設定に与える影響は前の4つに比べて少ないといえます。床暖房や24時間換気など分譲住宅並みの最新の設備を備えたとしても、その分を家賃に反映できるとは限りません。 ただし、あまりに古い設備は入居者から敬遠される傾向があります。例えば和式便器、バランス窯などは入居者から好まれません。そのため、どうしても家賃は低く設定しなければならなくなります。

失敗しないための家賃設定の注意点

ここまで挙げた項目を周辺と比較して家賃を決めさえすればよい、というものではありません。一見、周辺相場とそん色ないと思われる場合でも、なかなか入居者が決まらないケースもあります。そこで、家賃設定で失敗しないための注意点を知っておきましょう。

インターネットでの検索を考慮

最近は、入居者自身でインターネットを使って物件情報を集めることが主流となりました。そのため、周辺物件の相場を調べることに加えて、入居者がインターネット上で物件を調べた際にヒットしやすくなるような家賃設定の工夫も重要です。例えば、家賃を10万1000円に設定していた場合、「10万円以内」の設定で物件検索した人には物件情報が表示されません。1000円の差であれば入居する候補に加わったかもしれないのに、表示されなかったために問い合わせにつながらないという可能性があるのです。そうならないように周辺の相場と比較しつつ、検索にかかりやすい家賃設定を考慮しましょう。

敷金と礼金

敷金・礼金も入居者にとっては賃貸住宅を選ぶ際に重視するポイントです。したがって、敷金・礼金も家賃と同様に、周辺の状況に合わせて設定することが必要になります。例えば、新築時は礼金を受け取れた場合でも、次の入居者募集では「新築」というメリットがなくなってしまっているため、周辺の状況に合わせて礼金をなしとすることが必要になってくることがあります。また、敷金は賃借人が退去する際に返還することが原則なので、入居時に預からないケースも増えています。

入居条件

入居条件も家賃設定に影響します。例えば、一棟の賃貸マンションを所有している場合、ペット飼育不可、学生や女性限定といった入居条件をオーナーの判断で設定することができます。こうした条件は、入居者を制限することになりますので、状況によっては家賃を低めに設定しなければならなくなります。  

まとめ

マンション経営において、家賃設定はオーナーが決定する重要なポイントのひとつですが、紹介したように考慮すべき点も多く、意外と設定が難しいものです。そのため、オーナー自らが普段から周辺相場を把握しておくことが大切です。実際の運営では、募集業務を委託する不動産会社の担当者とも相談しながら、適切な設定とすることを心がけるとよいでしょう。

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