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専門家コラム

2020年07月10日

不動産投資ローンのメリットと注意点について

不動産投資のレバレッジ効果とは?メリットと注意点を解説します。

執筆者

秋津 智幸

不動産サポートオフィス 代表コンサルタント

公認不動産コンサルティングマスター・宅地建物取引士・ファイナンシャルプランナー(AFP)
自宅購入、不動産投資、賃貸住宅等不動産全般に関する相談・コンサルティングを行う他、企業研修や各種セミナー講師、書籍、コラム等の執筆・監修にも取り組む。
著書:「賃貸生活A to Z」(アスペクト)、「〔2019~2020年版〕30年後に絶対後悔しない中古マンションの選び方」(監修)(河出書房新社)他

  1. ●不動産投資ローンを借りるメリット
  2. ・レバレッジ効果で収益性が上がる
  3. ・1つの保険で2つの役割
  4. ・手元資金の有効活用が可能
  5. ●不動産投資ローンを借りる際の注意点
  6. ・逆レバレッジ効果
  7. ・借り過ぎは禁物
  8. ・簡単には借りられない

不動産投資ローンを借りるメリット

レバレッジ効果で収益性が上がる

不動産投資ではアパートローンなどの投資ローンを利用することで「レバレッジ効果」が働き、少ない資金でより高い収益性が期待できるようになります。レバレッジ効果とは「テコの原理」のことで、小さな力で大きな効果をもたらすという意味です。不動産投資においては、自己資金とローンを組みあわせて投資資金に対する収益を見た目以上にすることを言います。

 

例えば、自己資金のみで利回り8%の2,000万円の物件を購入した場合、年間の家賃収入は160万円で、投資資金に対する利回りはそのまま8%です。一方、自己資金2,000万円を頭金に8,000万円のローンを利用し、利回り8%の1億円の物件を購入した場合、家賃収入は800万円で、投資資金に対する利回りは40%となり、収益は5倍になります。この場合、諸経費やローンの返済分を考慮しても160万円を超える収益が期待できます。これが「レバレッジ効果」と言われるもので、不動産投資では広く知られた考え方です。

1つの保険で2つの役割

不動産投資ローンを利用する場合でも、住宅ローンと同様に団体信用生命保険(以下「団信」)に加入することができます。団信とはローン契約者(返済する者)が万一死亡した場合や重度障害などを負ったときに、ローンの残債分が保険金として金融機関に支払われ、ローンが完済される保険です。 

 

住宅ローンにも団信がありますが、住宅ローンの場合は適用されてもローンの返済がなくなるだけですが、不動産投資ローンで団信が適用された場合は、ローンが完済されたうえで、家賃収入のうちローン返済分が残された家族の生活を安定させる収入として利用できるようになります。したがって投資ローンの団信は、死亡保険だけでなく、収入補償保険の役割もあることになり、1つの保険で2つの役割があることになります。

手元資金の有効活用が可能

投資ローンを利用することによって、本来使うはずだった自己資金を手元に残すこともできます。手元に資金を残しておくと、万一資金が必要になった場合に備えることができます。また、手元に残った資金は別の資産運用に回すこともできます。ほかの運用に回した場合は分散投資をすることになるため、同じ金額を運用する場合でも、より安全に運用することが可能になります。

不動産投資ン投資ローンを借りる際の注意点

逆レバレッジ効果

不動産投資ローンには「レバレッジ効果」というメリットがありますが、注意しなければならないこともあります。それはレバレッジ効果が逆に働いてしまうと、マイナスが大きくなってしまうという点です。これは「逆レバレッジ効果」と呼ばれています。家賃収入が予想を大きく下回る、金利の上昇により返済額が大幅に増える、修繕費など経費が嵩(かさ)むといった理由で収入減または費用増、あるいはその両方によって収支がマイナスになる場合、レバレッジが効いているため、マイナスの額も大きくなってしまうのです。

 

たとえば、2,000万円の自己資金に8,000万円のローンを利用し、利回り8%だった1億円の物件の家賃収入が半減して年間家賃収入が400万円になったとします。もしローン金利が上昇して返済額が年間450万円となった場合、年間50万円の赤字となってしまいます。

しかし、仮にローンは利用せず自己資金2,000万円のみで運用していた場合、家賃が半減して80万円になっても、ローンの返済が必要ないので年間80万円の収益を得られていたということになります。

レバレッジ効果は魅力的ですが、物件選定とローン選びの際には物件の立地などの条件から期待できる家賃収入の予測やローンの借入額、ローン金利などに無理はないかなど、注意を払う必要があります。

借り過ぎは禁物

不動産投資ローンは住宅ローンに比べると金利が高く、融資期間は短いものが多くなっています。金利についても長期固定金利のものは少なく、短期固定または変動金利が多い傾向があります。そのため、あまり借り過ぎてしまうと、ちょっとした変化で返済が厳しくなってしまうことが往々にして起こり得ます。

 

たとえば、満室時の家賃収入が毎月50万円の物件に対して、毎月の返済額が40万円となるローンを借りていた場合、空室が少し増えたり、変動金利で金利が少し上昇したりすると、簡単に家賃収入を返済額が上回り、収支がマイナスになってしまいます。その場合、足りない分は家賃収入以外の資金や収入でローンを返済する必要があり、家計を圧迫してしまうことになります。

 

不動産投資ローンを借りる際には家賃収入は変動することを前提に、金利や融資期間を意識して借り過ぎないように注意する必要があります。

簡単には借りられない

不動産投資ローンは基本的に投資(事業性)資金であるため、資金や収入に余力のある人しか利用できません。さらに、ローンの対象(担保)となる物件の価値も考慮されます。したがって、誰でもあるいはどの物件でも利用できるというものではないという点は注意が必要です。

 

また団信の利用が前提になっている金融機関では、健康状態に問題があるとローンは借りられませんし、年齢に制約がある金融機関であれば、高齢であるほど返済期間が短くなってしまうため、希望どおりの融資が下りないこともあります。不動産投資ローンを利用する際には、まず自分がどの程度融資を利用できるのか、金融機関に相談することからはじめることがポイントになります。

 

まとめ

不動産投資ローンは、うまく活用できれば本来の資金だけでは運用できない資産を運用することができます。また不動産を担保に購入するための資金であるという性格上、店舗運営などに利用するほかの事業性ローンに比べれば、非常にいい条件で融資が利用できるのも魅力と言えます。不動産投資で投資ローンを検討される方は、メリットと注意点を念頭に置いて検討することをおすすめします。ただし、繰り返しになりますが、借り過ぎにはくれぐれも注意が必要です。

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