賃貸マンション経営に役立つ豆知識をお届け 賃貸経営コラム

専門家コラム

NEW

2021年05月23日

生活保護の実態と生活保護受給者と賃貸借契約を締結する場合の注意点

コロナ禍に伴い、生活の困窮、業績の悪化が影響して収入が減少した方は多くいらっしゃるでしょう。そうした状況下で、生活保護の申請を検討する方も増加していると想定されます。実際のところ、生活保護の実態はどうなっているのでしょうか。また、生活保護受給者の方に入居していただく場合は、どのような点に注意すれば良いのでしょうか。今回は生活保護という視点から、賃貸借について考察していきたいと思います。

執筆者

伊藤亮太

ファイナンシャル・プランナー

岐阜県大垣市出身。慶應義塾大学大学院商学研究科経営学・会計学専攻修了。在学中にCFPを取得する。
その後、証券会社にて営業、経営企画、社長秘書、投資銀行業務に携わる。
2007年11月に「スキラージャパン株式会社」を設立。
現在、富裕層個人の資産設計を中心としたマネー・ライフプランの提案・策定・サポート等を行う傍ら、資産運用に関連するセミナー講師や講演を多数行う。自身としても全国に不動産を所有し賃貸経営を行う。
著書に『図解即戦力 金融業界のしくみとビジネスがこれ1冊でしっかりわかる教科書』(技術評論社)、『ゼロからはじめる!お金のしくみ見るだけノート』(宝島社)、『徹底研究 ドクターマーケット開拓術』(近代セールス社)など多数。

生活保護世帯は増加傾向に

厚生労働省によれば、2020年12月に生活保護の受給を開始した世帯数は1万7,272世帯でした。前月に比べて367世帯増加し、前年同月比で見ても4.0%のプラスとなっています。これは高齢者が増加していることの他に、コロナ禍による失業や収入減少に伴い生活保護を選択する人が増加しているのではないかと推測できます。

2020年12月の受給世帯数は、163万8,124世帯です。高齢者が55.3%と最多ではあるものの、失業中を含むその他が24万6,578世帯となっています。こうした状況から、コロナ禍の影響は長期化しており、今後も生活保護世帯数が増加する可能性があります。

生活保護受給者に賃貸することは意義があること?メリット、デメリットは?

生活保護受給世帯では、月々の生活費の他、家賃に関しても扶助が発生します。最後のセーフティネットとしての役割は大きく、生活保護を受けることで生計を立てながら、自立に向けた準備を行うといった目標を立てる方もいらっしゃると思います。

こうした生活保護受給者の方に対して、実は筆者も応援の意味も込めて一部の部屋を貸し出しています。社会復帰に向けて頑張っている方々を支援する意味でも、生活保護受給者向けに賃貸を行うことは意義があることです。とはいえ、ただ貸せばよいというわけではありません。メリット、デメリットを吟味したうえで検討する必要があります。

生活保護受給者の方に部屋を貸すメリットは、住宅扶助が支給されることです。この給付金をもとに家賃を支払うことになるため、貸す側から見れば安定的に家賃収入を得ることができる可能性があります。また、社会貢献にもつながる側面があるため、意義は大変大きいでしょう。

コロナ禍で失業し生活保護を受けている方向けに部屋を貸し出し、満室経営をしている方もいます。繁忙期のタイミングを逃し、なかなか入居者がつかないといった場合には生活保護受給者向けに部屋を貸し出すと比較的早く賃貸につながる可能性があるのです。 

一方で、メリットばかりではありません。生活保護受給者は、そもそも最低限の生活を営むための扶助しか支給されないため、場合によっては住宅扶助も生活費として使いこんでしまうリスクがあります。また、病気が原因で就労できなくなるケースも考えられ、家賃滞納リスクがあることも忘れてはなりません。賃貸経営で安定する側面もあれば、家賃滞納で大家としては困るというケースもあるのです。

生活保護受給者と賃貸契約を結ぶ際の注意点に対する対応策とは?

こうした家賃滞納リスクを防ぐためには、どうすればよいでしょうか。生活保護受給者と賃貸契約を結ぶ際に、まずは連帯保証人を確保することをお勧めします。最低1名は確保することで家賃滞納リスクを軽減できます。また、生活保護受給者の方でも家賃保証会社の審査が通る可能性は十分ありますので、家賃保証会社を利用するのも一つの手段として有効でしょう。

この他、住宅扶助費等の代理納付を利用する方法があります。これは大家さんが依頼することで、役所が生活保護受給者本人に代わって住宅扶助費を大家さんの口座に直接振り込む方法です。この制度を利用することで、家賃滞納を防ぐことが可能です。家賃滞納が発生した場合に役所へ相談し切り替えることもできます。

生活保護と聞くと、マイナスなイメージを持つ方もいるでしょう。確かに、自立が難しい状況ですから、一般的なご家庭と比べれば金銭面の状況は悪いといえるかもしれません。しかし、コロナ禍において立ち行かなくなっている方が増加しているのも事実です。そうした方々を支援するためにも、空室がある場合には生活保護受給者の方に貸し出すことを検討されてみてはいかがでしょうか。

 住宅扶助は限度があるため、家賃が相場よりも高いといったケースでは難しいかもしれませんが、一般的なアパートやマンションであれば生活保護受給者から申し込みが入るかもしれません。一定のリスクはあるものの、コロナ禍の影響は長期化することも十分考えられるため、生活保護受給者をターゲットとすることで安定した賃貸経営を行える可能性もあります。

繁忙期が過ぎた今、賃貸借契約において対策をとり、リスクヘッジを行いながら生活保護受給者の方に向けて貸し出しをすることは、これまでとは異なる空室対策として力を発揮するかもしれません。