大学創立100周年を祝う
記念すべき一大プロジェクト
2013年、電気通信大学の創立100周年を記念し、新たな学生宿舎と職員宿舎、および共同研究棟を建設するという大型プロジェクトの計画が立ち上がった。かねてより、民間事業者が公共の施設整備を行うPPP(パブリック・プライベート・パートナーシップ)方式による事業案件を模索していた大成ユーレックは、大成建設をはじめとした他企業と連携し、本プロジェクトへの参加を表明。見事、熾烈な提案競争に勝利を収めた。これまでに類を見ない大規模な建設計画となった本件に対し、大成ユーレックでは工場・現場・設計という3つのポジションを連携させたワンストップサービスを駆使し、建設に着手。PC工法という大成ユーレックが得意とする独自の工法で積み上げてきた豊富な経験と実績、そして自社工場を持つという当社ならではの強みを最大限に活かしながら、学生と教職員、電気通信大学に関わるすべての人々の想いをのせたプロジェクトが、ここに始まったのである。
大規模かつ
多様性のあるプロジェクト
綿密な計画と豊富なアイデアで
活路を見出す
電気通信大学での建設工事は、非常に規模の大きなプロジェクトであったため、PC工法で用いるコンクリート部材の数も膨大となり、工場をフル稼働させる必要があった。しかし、だからと言って品質を犠牲にすることはできない。工場で製造管理を行った神部は「製造した部材は最終的に3743ピースにのぼりましたが、部数が多いからこそ品質検査にもより力を注いでいくという気持ちで取り組みました」と、当時を振り返りながら語る。デザイン面での苦労も少なくはなかった。特に学生宿舎の設計に関しては、一般的な一人暮らし用の部屋から、シェアハウスのような学生同士のコミュニケーションを重視した部屋など、そこに住まう人々のさまざまなニーズを満たすことが求められた。意匠設計を務めた小田原は「住む人の気持ちを考えながら、どうすればもっと良い空間を演出できるのか、アイデアを出し尽くしましたね」と語る。
自分たちの都合ではなく、
仕事の先にある人々の幸せを
目指して
実際の建設現場においても、苦労は絶えなかった。搬入経路が限られた中で、いかに効率的に部材を運び、建物を組み立てていくのかについては、現場を担当する重盛、友邊ほか施工管理の担当者たちの手腕に委ねられていた。「計画を綿密に立て、関係各所とも入念に打合せをしながら進めました。場合によっては強硬な姿勢を持たなければならない時もありましたが、良い建物をつくるためであれば、些細な事でも妥協することはできません」と重盛は話す。当時は新人だった友邊も、こうした激しい動きに必死で食らいついていきながら、スムーズな現場の進行を精いっぱいサポートした。こうした苦労の上に出来上がった新たな学生宿舎、職員宿舎、および共同研究棟は、電気通信大学の次の100年を期待させるような機能性と重厚感を併せ持った、大学の象徴的な存在となったのである。「工場では一枚の板だったものがこうして立派なカタチになるのは、何度見ても感慨深いものです」と神部は当時を振り返った。
特別な存在ではなく、当たり前の
存在として
そこに住む人々を
見守る存在になってほしい
本プロジェクトでは、学生と教職員、電気通信大学に関わるすべての人のための施設が建てられた。特に学生にとって、大学生活というのはかけがえのない青春の1ページであり、一生忘れることができない時間である。その限られた時間を少しでも有意義なものとし、ここでしか得られないたくさんのコミュニケーションが生まれて欲しいというのは、この事業に携わった者すべての想いだ。「ある意味で、存在を意識されない。あって当たり前。それぐらい地域に溶け込み、ここに暮らす人々の生活に欠かせないものになってくれるとうれしいですね」という重盛の言葉も印象深い。建物は、建てて終わりではなく、建てた後にこそストーリーが始まるものだ。安心できる環境の中で、たくさんの人々の想いをのせながら、ここでしか描けないさまざまなストーリーが描かれていくことを願っている。