新しい価値を持った
今までに
ないマンションを建設する
神奈川県住宅供給公社は、所有する北加瀬第1・2団地を取り壊し、新しい賃貸住宅のあり方を示す「生涯賃貸住宅」をコンセプトとした、フロール元住吉の建築を決定。2017年5月、設計・施工を担当する企業を募った。そこでは、これまでにない新たな取り組みとして、趣味やコミュニケーションの場となる「シェアラウンジ」つきの賃貸住宅が計画されていた。単なる住宅ではなく、地域交流の場となるシェアスペースも併せ持つという物件は、大成ユーレックでもなかなかない挑戦となる案件だったが、コンセプトの具現化を目指した社内会議を密に重ね、企画を提案。こうして、大成ユーレックによるフロール元住吉のプロジェクトがスタートしたのである。目指すのは、新しい価値を持った今までにないマンションの建設。どうすれば住むこと以上の価値を提供できるのか。大成ユーレック一人ひとりのアイデアが結集する。
大規模プロジェクトだからこそ
一つひとつの小さな作業が重要になる
フロール元住吉は、3棟153戸を構える大規模住宅で、大成ユーレックがこれまで担当してきたプロジェクトの中でもかなりの規模を誇る。「3棟同時の建設は、それだけ管理する範囲が膨大になるため、一つひとつの作業に、より一層集中しなければなりません」と施工管理担当の尾崎は語る。加えて、シェアラウンジがあることにより、施工方法についても試行錯誤を重ねる必要があった。そこで大成ユーレックでは、元来得意とするPC工法とあわせて、RC工法を局所的に用いることによって、効率的な建設工事を実現することにした。大規模プロジェクトとなると、そこで動くお金の流れもより複雑なものとなる。ここで、事務を担当した藤澤の手腕が光る。藤澤は「いかに素早く正確な予算案を作成できるかで、工事の質も大きく変わります。規模が大きいほど難易度は上がりますが、だからこそ燃えてきますね」と笑顔を見せた。
また、完成した暁には地域のシンボルとなることを目指した建物でもあったため、近隣の方々の理解を求める活動もより積極的に行った。工程表の配布や説明会の実施など、いかに建設工事にご理解をいただけるか、小さな取り組みをないがしろにせず、一つひとつじっくりと進めていくことで、人々の期待をより大きなものとしていったのである。
細部への飽くなきこだわりが
そこに住まう人々の満足を生む
設計を担当した太田が最もこだわったのが、シェアラウンジ部分だ。マンションの住民だけが使えるエリアにプライベート性は確保しつつ、その一方で地域の人々に敷居が高いとは感じさせない開かれた空間を演出する必要がある。太田は当時を振り返りながら「協力設計事務所と何度も打ち合わせをし、模型を作りこみながら、少しずつイメージをカタチにしていきました」と話す。また、構造はもちろんだが、外装や内装、その色味一つにしても一切の妥協を許さず、フロール元住吉が掲げる「生涯賃貸住宅」というコンセプトをいかに具現化するかを徹底的に考え抜いた。施工管理として外装仕上工事を担当している梶野も「居住性はもちろん大切ですが、だからと言って見た目を犠牲にして良いわけではありません。外から見て住みたいと思える建物にしなければならないと考えると、外装仕上の仕事は責任重大ですね」と語る。見える部分と見えない部分、そのどちらもないがしろにすることなく、細部にまでこだわり抜く。その先にこそ、この仕事でしか味わえない醍醐味があるのだ。
入居者に喜ばれ
地域に
受け入れられる場所を目指して
フロール元住吉が示すのは、今までのマンションにはなかった、新しいライフスタイルそのものだ。従来の賃貸住宅は、住むことだけを考えた物件も多く、ともすれば閉じたコミュニティをあえて建設してしまっていることも少なくない。しかしフロール元住吉では、安心で快適なプライベート空間を持ちつつも、周囲とのほどよいつながりが感じられ、地域に溶け込むような一体感を味わうことができる。情報技術が発達した現代社会だからこそ、人々とのアナログなつながりが持つ価値は、ますます高まっていくだろう。長い歴史を持った北加瀬第1・2団地が新しく生まれ変わった姿を見て、「前より良くなったね」と言ってもらえるように。そして、ここに住んだ人々が自分らしい生き方を実践できる場所になれるように。そうした想いのもと、設計・施工・事務、それぞれの分野のプロフェッショナルたちが互いに協力し合いながら、建設工事を進めている。