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2021年05月23日

相続時精算課税制度で賃貸物件を贈与するメリットとは?

相続税対策として、相続財産を減らすために生きているうちに財産を子どもや孫に贈与する「生前贈与」をする方は少なくありません。生前贈与の方法としては、贈与税の基礎控除額110万円を利用する「暦年贈与」が代表的です。 

しかし、賃貸アパートや賃貸マンションなど、価格が高いものを暦年贈与すると贈与税の負担が重くなる恐れがあります。今回は、重い贈与税の負担を回避できる可能性がある、相続時精算課税制度を活用した賃貸不動産の贈与について解説します。

執筆者

品木 彰

保険・不動産ライター、2級ファイナンシャル・プランニング技能士

保険・不動産ライター。2級ファイナンシャル・プランニング技能士。
大手生命保険会社にて7年半勤務し個人営業と法人営業の両方を経験。

のちに、人材会社にて転職エージェントとしての勤務を経て、2019年1月にフリーライターとして独立。
不動産や保険、税金など幅広いジャンルの記事を執筆・監修している。

相続時精算課税制度とは

相続時精算課税制度とは、20歳以上の子どもや孫が、60歳以上の両親や祖父母から財産を贈与されたときに、最大2,500万円まで贈与税が非課税となる制度です。財産を贈与した人が亡くなったとき、相続時精算課税制度の対象となった財産と、その他の相続財産の価値を合計した金額に相続税が課税されます。

 相続時精算課税制度では、財産の評価額が2,500万円を超えない限り、何度でも非課税で贈与できます。ただし2,500万円を超えた贈与財産については、一律で20%の贈与税が課税される仕組みです。

例えば、4,000万円の財産を相続時精算課税制度で贈与した場合、(4,000万円-2,500万円)×20%=300万円の贈与税がかかります。支払った300万円は、贈与した人が亡くなったときの相続税から控除されます。

相続時精算課税制度を利用するには、財産を贈与された人が税務署で所定の申請をしなければなりません。申請期限は、財産を贈与された翌年の2月1日〜3月15日です。申請がない場合、相続時精算課税制度は適用されず通常どおりに贈与税が計算されます。

相続時精算課税制度を利用して賃貸物件を贈与すると良い理由

相続時精算課税制度を利用して贈与された財産は、贈与税の課税対象にはならないものの、相続税の課税対象となるため節税にはなりません。しかし相続時精算課税制度を利用して、賃貸物件を贈与することで、税負担を軽減できる可能性があります。

賃貸物件の評価額は現金より低い

贈与税や相続税を計算する際、取得した財産の価値がいくらであったか評価されます。贈与や相続の際、不動産の価値は現預金や有価証券よりも割安で評価されるのです。 

土地部分の価値は、時価の7割程度である「路線価」、建物部分は、時価の6〜7割程度である「固定資産税評価額」を元に評価されます。また賃貸物件の場合、土地や建物の価値がさらに低くなるのです。

財産のすべてを現預金や有価証券で保有している方は、一部を賃貸物件に変えることで、贈与税や相続税の負担を抑えられる可能性があります。

贈与されたときの評価額で相続税が計算される

相続時精算課税制度の適用を受けた財産は、相続税の課税対象となります。相続税の計算時は相続開始時点の価値ではなく、相続時精算課税制度で贈与されたときの価値で評価されるのです。

例えば、評価額が2,500万円の賃貸アパートを贈与し、相続時精算課税制度を適用したとしましょう。相続の開始時点で、アパートの評価額が4,000万円に上がっていたとしても、相続税は贈与時の評価額2,500万円で計算されます。

 価値の上昇が見込める賃貸物件を相続時精算課税制度で贈与すると、贈与した時点の低い評価で相続税が計算されるため、税負担を抑えられる可能性があるのです。

家賃収入は相続税計算の対象外

賃貸物件から得られる家賃収入は、贈与された子どもや孫のものになるため、相続税の課税対象にはなりません。

賃貸物件を所有していると家賃収入を得ることで相続財産が増えていき、相続税が高額になる恐れがあります。相続税の負担を抑えたいのであれば、相続時精算課税制度を利用して賃貸物件を子どもや孫に生前贈与しておくのも方法の1つです。

相続時精算課税制度を利用する際の注意点

相続時精算課税制度を利用する際は、ここでご紹介する3点に注意する必要があります。

➀暦年贈与が利用できなくなる

相続時精算課税制度を選択すると、贈与税の基礎控除110万円が適用されなくなります。また相続時精算課税制度を一度選択すると、途中で取り消せません。

暦年贈与をして相続財産を少しずつ減らしていきたいと考えている人は、相続時精算課税制度の利用を控えたほうが良いでしょう。

➁小規模宅地等の特例が使えない

小規模宅地等の特例とは、亡くなった人が住んでいた土地や、事業を経営していた土地などを相続した場合に、土地の評価額が最大80%割引される制度です。

小規模宅地等の特例を利用できるのは、土地を相続したときであり、贈与時には適用されません。相続税対策のために賃貸物件を生前贈与しても、小規模宅地等の特例が適用されないことでかえって税負担が増える場合があります。

相続時精算課税制度を利用して賃貸物件を贈与する場合は、税理士に相談をして節税効果があるのかをシミュレーションで確認すると良いでしょう。

③価値の上昇が見込める不動産を購入する必要がある

相続時精算課税制度で贈与した賃貸物件の価値が下がってしまうと、相続税の負担が増えてしまう恐れがあります。

評価額2,500万円の賃貸アパートを贈与し、相続時精算課税制度を適用するケースで考えてみましょう。相続時にアパートの評価額が1,500万円まで下がっていても、相続税は2,500万円の評価額をもとに計算されてしまうのです。

相続時精算課税制度を有効に活用するためには、立地やエリアの開発状況を確認し、将来的に価値の上昇が見込める賃貸物件を選ぶことが大切です。