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2021年07月20日

土地活用の企画術⑤堅実な賃貸経営のために知っておくべき事業収支の読み方のポイント

事業収支の仕組みがわかると  
     手元の現金の流れがわかる

賃貸事業収支計算は、会計上いくらの利益が出たのかという損益計算、賃料収入から運営費・借入金返済などの支出を差し引き、そこから所得税・住民税を支払った後、最終的に手元にいくら残るのかといった資金計算をまとめたものです。今回は、事業収支の読み方とポイントについてキャッシュフロー計算をもとに解説します。

キャッシュフロー計算の仕組み  

キャッシュフロー計算では、まず 「営業純利益」を求め収益性を確認し、
「税引後キャッシュフロー」で最終的な 手残り額を把握します。

① 実効総収入

満室稼働時の総収入である「総潜在収入」から「空室・賃料未回収等損失」を差し引いたものです。

② 運営費

賃貸事業の運営・建物の保守管理、土地建物の税金・借地料など、
賃貸事業全般にかかるランニングコストです。

③ 営業純利益(以下「NOI」)

「実効総収入」から「運営費」を差し引いたネット収入。
事業の収益性をみるうえで基本となる金額であり、実質利回りの計算根拠となる数値です。

④ 年間借入金返済額

賃貸住宅融資の年間返済額

⑤ 改修工事費(資本的支出)

10~15年ごとに実施する大規模修繕工事費用。
事業収支上では、修繕工事実施年度にキャッシュフロー累計額から差し引くケースと、
修繕積立金として毎年のNOIから差し引くケースがありますが、
高額な支出ですので、いずれのケースでも計上漏れの無いよう注意が必要です。

⑥ 税引前キャッシュフロー (以下「税引前CF」)

「営業純利益(NOI)」から「年間借入金返済額」を引いた、
所得税・住民税などの税金を引く前のキャッシュフロー。

物件そのものの資金収支を表しています。

⑦ 所得税・住民税

鉄筋コンクリート造賃貸住宅の場合、法定耐用年数は、
建物本体が47年に対して付属設備が15年、エレベーターは17年となります。
つまり15年を過ぎると損金計上できる減価償却費が減少していくことになります。
また借入金返済についても、元利均等払いの返済方式を選択している場合、
毎月の返済額は一定ですが、返済額の内訳は、
当初元金部分が少なく経費計上できる利息部分が多く、
徐々に元金部分が増え利息部分が減っていく仕組みとなっています。
つまり返済額は一定でも計上できる経費は徐々に減少していきます。
したがって年数を経るにつれ所得は押し上げられ、
超過累進税率である所得税負担が大きくなります。
ここが長期事業収支を見る際に注意すべきポイントであり、
事業実施の可否は「税引前」CFではなく「税引後」CFを確認した上で
判断しなければならない理由です。

⑧ 税引後キャッシュフロー   (以下「税引後CF」)

「所得税・住民税」を差し引いた後、最終的に手元にいくら残るのかを示すキャッシュフロー。
事業実施の可否、長期(借入金返済期間)にわたる税引後CF表で判断します。
また賃貸事業に係る所得税の節税対策の必要性や、
対策を講じた場合の予測される効果について、
この税引後CF表で比較検討します。
基本的には所得の圧縮・分散による節税対策となりますが、
その手法は様々で専門性も高いため、
対策にあたっては土地活用に詳しい税理士に相談するとよいでしょう。

■ 事業実施を判断するための 主な投資指標

不動産投資指標は、土地活用の様々な事業手法を比較検討する際に有効なツールです。
以下の「実質利回り」「元利金返済カバー率」「損益分岐点」が主な投資指標です。
税引き後CF表とあわせて利用することで、
多角的な面から事業内容を分析することができます。

Ⓐ 実質利回り(以下FCR)

営業純利益「NOI」を「総事業費」で割ったもので、
全額自己資金の場合の利回りとも呼ばれ、
「投資の効率性」を示す重要な指標です。
一方、表面利回りは100%稼働時の「総潜在収入」を「総事業費」で割ったもので、
空室・賃料未回収等損失や運営費が加味されていないため、
事業性の判断に当たっては実質利回りで比較検討します。

Ⓑ 元利金返済カバー率(以下DCR)

「NOI」を「年間借入金返済額」で割ったもので、
返済額の何倍のネット収入があるかといった「借入金返済の安全性」を示す指標です。
一般的には1·3以上であれば安全圏といわれていますが、
借入金リスクに対する考え方によって変わってきますので、
より安全性を重視した経営を考えるなら1·4から1·5以上が基準となるでしょう。
またDCRが1·0を割り込むとデフォルトとなり賃料収入から返済ができなくなります。

Ⓒ 損益分岐点(以下BER)

運営費と借入金返済額を総潜在収入で割ったもので、どのくらいの空室まで、
あるいは賃料ダウンまで耐えられるかといった「経営の安全性」を示す損益分岐点です。

■ まとめ

事業収支計算

事業収支計算は、実効総収入から運営費を引いたネット収入である
「営業純利益(NOI)」ベースのCF表を作成して確認します。

事業の資金収支

事業の資金収支は、所得税・住民税を差し引いた後の「税引後CF」を
借入金返済期間にわたる長期シミュレーションで確認します。

主な投資判断指標

主な投資判断指標として、収益性は「実質利回り(FCR)」、
借入金返済の安全性は「元利金返済カバー率(DCR)」、
経営の安全性は「損益分岐点(BER)」を使って比較検討します。