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専門家コラム

2016年10月28日

不動産の相続、遺言書はなぜ作るべき?

「相続財産が少なく、家族仲も良ければ、遺言書を作る必要はない」と思われがちですが、分割の金額や割合等を巡って少なからず揉めたりします。中でも賃貸アパート・賃貸マンションのような分割しにくい不動産に関して、トラブルとなるケースが目立ちます。専門家によれば、やはり遺言書を作った方が良いわけです。これから、遺言書を作成した方が良い理由、そして遺言書作成の基本知識について、詳しくご説明します。

監修者

太田垣 章子氏

章(あや)司法書士事務所 代表司法書士

神戸海星女子学院卒業後、平成元年にオリックス野球クラブ株式会社入社。オリックス・ブルーウェーブの広報として3年間勤務し、平成13年司法書士試験に合格し、中野司法書士事務所に勤務。平成15年、簡裁代理等関係業務認定。平成18年に独立開業、平成24年、事務所を東京に移す。裁判関係も得意とし、離婚や養育費問題、後見・遺言関係、登記簿に取り組み、賃料滞納による建物明渡等では実務と講演、執筆等も手掛けている。著書に「賃貸トラブルを防ぐ・解決する安心ガイド」「家賃滞納という貧困」がある。

相続トラブルを防ぐ、家族円満のカギは遺言書!?

現代は相続も「家」より「個人」の時代。これまで、「家督相続」という考え方から長男が相続していたものも、兄弟姉妹もが各自の相続分を主張するようになりました。「争続」という言葉はここから生まれたものです。では、なぜ家族の中でも相続について揉めるようになったのでしょう。専門家たちは遺言書がないからだと分析しています。 遺言書がない場合、相続人全員が相談して決めなければなりません。相続財産が現金だけなら、比較的容易に解決できそうですが、日本では相続財産の圧倒的多くの部分を、不動産が占めています。不動産を羊羹のように切り分けることもできないため、相続分の確定が難航しがちです。そうなると、仲がとても良かった家族でも、揉めはじめ、ひどい場合には絶縁状態にもなりかねません。 「子孫のために」と遺した財産の相続がきっかけとなり、一家が分裂したり離散したりしてしまうことを避けるためにも、是非ご自身で分け方を決め、遺言書を残しておきましょう。

遺言書の種類と作成上の注意事項

遺言書は、大きく分けて「自筆証書遺言書」と「公正証書遺言書」の2種類があります。

自筆証書遺言書

「自筆証書遺言書」は文字通り手書きの遺言書です。ここで注意すべきことは、パソコンで作成し、サインのみ自筆のものは無効である点です。以下に、自筆証書遺言書を作成する際の注意事項をまとめました。

自筆証書遺言書が好まれている理由として、手軽さが挙げられます。思い立ったらすぐに書けることは非常に便利ですが、その反面、自己管理の不手際により見つけてもらえなかったり、隠されてしまう恐れもあります。また、自筆証書遺言書の開封は、家族裁判所で相続人全員の立ち合いのもと検認手続きをしなければなりません。作成が手軽な反面、実行の時に煩わしさもあります。

公正証書遺言書

遺言内容をより確実に実行させたい場合には、「公正証書遺言書」の作成をお勧めします。公正証書遺言書とは、公証人に作成してもらう遺言書です。基本的には全国各地にある公証役場にて作成することができます。作り方のあらましは以下の通りです。   ステップ1:遺言書の内容を確定する ステップ2:公証人と調印の日時を決める ステップ3:必要書類を揃える ステップ4:調印当日、証人2名とともに公証人の面前で、遺言書の内容を確認した上で署名捺印する   もし公証役場に行けない場合は、公証人に出張してもらうことも可能です。費用がかかりますが、自宅療養や入院中でも、本人の意思さえ明確であれば遺言書を作成できます。 また、公証役場に行けば、公正証書遺言書の有無を検索して、存在を確認することができます。 注意事項として、自筆証書遺言書の作成よりも手間がかかることが挙げられます。また、遺言書に盛り込む相続額に応じた手数料がかかります。

ともあれ遺言書は残された人たちに対する最後のメッセージ。特に土地や不動産を所有し、賃貸アパート・賃貸マンションを経営している場合、遺言書の有無は相続に大きい影響を与えます。大切な家族のため、面倒と思わず、遺言書を作成しておくことをお勧めします。ただし、特定の人物に限定した相続を希望しても「遺留分」が認められ、他の被相続人にも一定分が渡ることをお忘れなく。

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