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コラム

2016年08月30日

家族信託の仕組みと種類

2007年に信託業法が改正されて以来、信託が私たちの生活にとってより身近な存在となりました。信託の中でも家族信託は「家族の家族による家族のための信託」とも呼ばれており、費用を抑えて気軽に利用することができます。家族信託の特徴を理解した上で計画的に利用すると、相続をスムーズに進められます。

家族信託が注目される背景について

信託業法の改正により、信託兼営金融機関に加えて信託会社や管理型信託会社、グループ企業内の信託など幅広い担い手が信託を扱うようになりました。また、信託財産についても改正前は金銭、金銭債権、土地およびその定着物などに限定されていましたが、改正後は知的財産権を含む財産権一般に適用範囲が広がっています。こうしたことから、信託を適用できる範囲が拡大するとともに、担い手が増えることで使いやすい仕組みが整ってきたといえるでしょう。また、信託の利用に対する社会的な需要が高まっていることも注目したいところです。日本国内では少子高齢化が進み、平均寿命は少しずつ長くなっています。こうした流れの中で認知症を発症する人も増加しており、厚生労働省によると全国の65歳以上の高齢者の認知症有病者率は15%と推定されており(2012年)、2025年には5人に1人が認知症有病者の状態になると予測されています。今後、しっかりと意思決定ができるうちに、信頼できる家族に信託しておきたいというニーズが高まると予想されます。あわせて、自分の意思で財産の配分や組み合わせを決めておきたいという要望も高くなるでしょう。

成年後見制度、遺言信託と家族信託

家族信託と似た性質を持つものとして、成年後見制度や遺言信託があります。

成年後見制度、遺言信託の特徴について

成年後見制度は、認知症をはじめ知的・精神障害などにより判断能力が不十分な人の財産を適切に管理するために設けられています。成年後見制度は法定後見制度と任意後見制度に大別され、法定後見制度が本人の判断力が衰えた段階で利用できるのに対して、任意後見制度については判断能力が衰えた時に備えて制度への登録が可能です。いずれにしても成年後見制度は本人の判断能力が衰えた段階で後見人の代理行為が可能になります。 ただし任意後見人には取消権がないため慎重な判断が必要であり、また、法定後見人は財産保全の義務があるため相続人の利益となる財産の売却や投資ができないことに注意が必要です。   遺言信託については信託銀行や銀行が広くサービスを提供するようになりました。信託銀行を利用すると遺言の作成や保管のほか、資産活用についての相談が可能です。また、委任した人が亡くなった時には信託財産が受託者に信託されます。相続財産を年金形式で渡すなど、受託者への渡し方を指定することも可能です。ただし、信託銀行や弁護士に対し遺言執行報酬が必要となり、執行の対象となる財産が増えるにつれて費用がかさむ面もあります。また、相続人同士で揉めている場合には信託銀行は遺言執行者となれません。

家族信託のメリットについて

家族信託を利用するメリットとして、計画的かつ柔軟に制度を利用できることがあげられます。家族信託なら、成年後見制度と違って本人の判断能力があるうちから希望する人に財産管理を任すことができます。成年後見人が管理する財産からは本人の利益とならない贈与はできませんが、信託なら相続対策のための贈与や投資も可能です。また、状況に応じて契約の更新もでき、複数の資産に対して別の受託者・受益者を設定することも可能です。 また、遺言書では被相続人が亡くなった時の相続方法についてしか指定できませんが、家族信託では2次相続以降の資産承継者の指定が可能なため、受託者の想いを次世代へ継ぎやすいメリットがあります。例えば子のいない夫婦の場合、1次相続は妻へ、2次相続では兄弟へ承継者の指定を行えば、先祖からの財産を身内に遺すことができるのです。 利益を目的とした信託ではなく家族・親族に管理を託すので、手軽な費用でできることもメリットです。

賃貸物件の相続と家族信託

家族信託の枠組みを利用することで、資産継承をスムーズに進めることができます。特にマンションやアパート経営などで不動産を所有されている方の場合、相続の際にトラブルが起こることがありますが、こうした場合でも家族信託を利用して管理処分権限を1人に絞り、受益者を平等に配分することで、相続時の不公平感をなくすことが可能です。このように利用しやすく費用面でのメリットもありますので、相続でお悩みの場合、家族信託を検討してみてはいかがでしょう。

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