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専門家コラム

2016年04月01日

平成28年度・税制改正。賃貸オーナー様が知っておくべきことは?

今回の税制改正のうち、賃貸経営や相続に関連し、賃貸オーナー様が注目すべき内容をお伝えします。

監修者

松原 健司氏

税理士法人FP総合研究所 代表社員・税理士

平成8年、関西学院大学経済学部卒業。平成12年、税理士登録。その後、税理士法人FP総合研究所において資産税部ゼネラルマネージャー、平成26年4月からは東京支店長も兼務。平成28年3月、代表社員(CEO)となる。著書に「これならできる!事業継承Q&A」(実務出版)、「相続税対策に成功する賃貸住宅活用の秘訣」(清文社)等がある。資産税に強い税理士として、わかりやすいセミナーが参加者から好評で、土地オーナー向けセミナーも多数講演。

相続した空き家の処分に有効な新しい制度とはどんなものですか?

耐震改修や家屋の除去後の売却で譲渡所得から3,000万円の控除が受けられるようになります。

各地で増加している空き家は、倒壊の恐れや衛生上の問題もあり、国は対策に乗り出しています。 本年度からは、固定資産税の軽減のため空き家を放置している所有者への対策として「空き家等対策の推進に関する特別措置法」も施行されています。 さらに空き家となっている家屋は旧耐震基準に基づいて建設されたものが多く、耐震性が問題視されつつも改修や解体には費用がかかるために、相続しても空き家になりがちということもあります。 そこで、相続人が使う見込みがない古い住宅が、空き家として放置されることを未然に防ぐ目的で、2016年度税制改正により「空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例」が創設されました。この特例により、相続後に空き家にしていた家屋を、一定の基準に耐震改修して売却するか、解体除去して土地を売却した場合、居住用財産の譲渡所得の3,000万円特別控除を適用できるようになります。制度の概要や注意点は図1の通りです。

減価償却の方法が一部変わるようですが、 どんな影響がありますか?

建物附属設備や構築物は「定額法」に限定。 事業収支に注意が必要です。

これまで、エレベーターなどの建物附属設備や塀・駐車場の舗装など構築物の減価償却方法は、定率法か定額法のいずれかを選べましたが、2016年4月1日以降に取得したものは定額法のみとなります。 どちらの方法でも耐用年数期間中に計上される減価償却費の合計額は同じですが、定率法では初年度から数年間は定額法よりも多く経費に計上でき、初期段階での節税メリットがありました。 定額法では期間中一定額を償却していくので、採算シミュレーションが異なってきます(図2)。事業収支計画に影響が予想されますので、新たな設備投資等をお考えの際はご注意ください。

30万円未満の備品は、 引き続き全額経費に。

たとえば賃貸マンションの給湯器、洗浄機能付き便座、エアコン、シリンダー錠などの備品や、賃貸経営業務でご使用になるパソコン、ソフトウェア、机、イスなど。取得価額が1件あたり30万円未満のものなら一括してその年度の必要経費に算入できる「少額減価償却資産の取得価額の必要経費算入の特例」が、2018年3月31日までに延長されました(青色申告者に限る)。金額は1台ごとに判定し、限度額は年間300万円まで、設備は取り付け費用も加算できます。 空き家を相続されたり、新築やご所有賃貸マンションでの設備投資をご検討中のオーナー様は、以上の税制改正の内容を念頭におかれて税対策および事業計画を行なってください。

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