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コラム

2015年10月30日

賃貸マンションオーナーの立ち退き交渉術

賃貸マンションの建て替え等で課題になりがちな「立ち退き」。立ち退き交渉にあたって注意すべきこととは?

借家法で定められた契約解除の正当な理由を理解する

入居者に立ち退きを要請するには、期間の定めがある契約の場合、まずは賃貸オーナーの側から「もう次の更新はしませんよ」という意思表明をし、契約の解除通知を送達します。しかし、どんな理由でも契約解除ができるわけではなく、退去を求めるのに社会通念上正当とされる事由が必要です。さらに、この申し入れは契約期間満了の1年〜6ヵ月以上前までに行う必要があります。借家法に定められている正当な事由を要約すると次の通りです。 【契約解除を求められる「正当な事由」】 ① オーナー等が居住するために建物が必要 ② 築年数が古く老朽化により取り壊しが必要 ③ 賃料不払いや建物の造作変更を勝手に行う等の契約違反により信頼関係が著しく損なわれた ④ 立ち退き料の支払いを申し出る場合 借家法は消費者保護の性質が強い法律なため、「新しい建物に建て替える」というのは、それ自体では正当な事由として認められにくい傾向にあります。そこで上記項目の「②」を事由とすることがままあります。この場合、建物の耐震診断を実施して「危険性あり」とされれば、その診断結果が入居者へ立ち退きを要請する上での説得材料の一つにもなるでしょう。 しかし、実際には「④」を条件として、立ち退き要請をすることが多くなっています。

立ち退き料は転居費用合計が一般的だがケース・バイ・ケース

「立ち退き料」は法律上定められてはおらず、契約解除をする正当な事由の不十分さをカバーするためのものと考えます。したがって事由の正当性が高いほど不要もしくは安く、正当性が低いほど高額になる傾向にあります。 たとえば、家賃滞納が数ヶ月に及んでいる場合は立ち退き料は不要となることもあります。 金額に決まりはありませんが、一般的には入居者の転居費用の総額が目安になります。 入居者と日頃から信頼関係が築けていれば交渉もしやすいかもしれませんが、やり取りがこじれると費用も時間もかさみ、訴訟となれば尚更です。 着実に立ち退きを実現するには、入居者の状況やこれまでの経緯をもとにケースバイケースで臨む必要があるので、専門家に相談するのが安心です。 ご自身で行われる場合は、経緯や合意内容(金額、条件等)を漏らさず書面化しましょう。 また、定期借家契約は期間満了で契約終了するため、立ち退きという考え自体が存在しません。築年数が経っている建物の場合、将来の建て替えに備えて、新規の契約は定期借家にしておくと無難です。

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